あきと

『むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをおもしろく,おもしろいことをまじめに,まじめなことをゆかいに,ゆかいなことをいっそうゆかいに』

宮台真司「菅政権を振り返る」(2021年10月10日)

菅義偉みたいな人が総理大臣になれる国って本当に面白いよね。100点満点で言うと「50点」です。公共性の観点から0点。加速主義の観点から100点。これで高市早苗が総理になれば加速主義の観点からすると300点くらいになりますね。

加速主義というのは元々、右派加速主義から始まっていると言われています。発想自体はローザ・ルクセンブルクなので戦間期なんですよね。左派から右派に移転してその後また左派加速主義っていうのが出てきました。実は加速主義っていうのはAccelerationismと言って右も左も従来の骨格を壊しちゃったんだよね。つまり右でも左でも結局、最後に「ぶっ壊してしまえ」っていうのが加速主義という発想です。

それは左にとっても右にとってもまず1回ぶっ壊さないと従来あるもののincrementalism(インクリメンタリズム)って言うんだけど、段々移行するみたいな官僚主義みたいなやり方だともう無理だ、と。まずぶっ壊せっていうのが加速主義なんですよ。

僕も基本その立場なんですけど、特に日本では本当にそれが必要なんだっていうことが重要です。例えばオリンピックへの固執っていうのは実は後進性への表れなんですよね。先進各国はオリンピックを引き受けたがらない所が多いし、ほとんど各都市も固執していないんです。でも元々、後進国だった1964年の日本にとってはオリンピックを成功させることが非常に重要だった。それで実際、統計的に言うと国民が自信を持って先進国の一員だと思うようになった。

でも今の日本は過去25年間、ただひたすら実質所得が下がり韓国にはとっくに平均賃金も最低賃金も抜かれまくっているという本当に美しい国なんですよ。これって政権が交代したくらいでは変わらないんです。何故かと言うとこれは政治の問題じゃないからです。僕の言葉で言うと「日本全国どこを切っても金太郎飴の安倍菅の顔」なんですよ。菅について言えばあんな面した奴が至る所にいるわけ。政界、官界、民間、アカデミズム。その意味で菅義偉は日本の象徴です。