あきと

『むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをおもしろく,おもしろいことをまじめに,まじめなことをゆかいに,ゆかいなことをいっそうゆかいに』

古市憲寿『同じ環境で過ごすと「おじさん化」する。違う環境の人と触れる努力を』

Q 日本のリーダー層に望むこと

今、G1っていう意識の高いエリートの人が集まっている場所にいるんですけど確かに此処にいる人たちは素晴らしくて日本の未来のことを考えているし、社交的で感じも良くて良い人ばかりですけど、でも同時にここに来て思うのは確かにここにいる限りは日本って将来、大丈夫だなって思えるんですけどこれって日本のほんの一部だと思うんですね。これから日本ってどんどん階層、階級社会になっていくし人々の価値観がどんどん分かれていく。そこの中でここにいる人にも思ってほしいなと思うことが1つあって、自分たちの価値観の中であまり固まってほしくないなあと思うんです。それは別にここにいる人に限らずどんな人に対しても思うんですけど会社であったりとか職場であったりとか若しくは地域でもどこでもいいんですけど、やっぱり人ってどうしても自分と身近な人や価値観が近い人と固まりがちになってしまってその価値観が当たり前になっていくと思うんですね。去年、出した「だから日本はズレている」って本でも書いたんですけどやっぱりどうしても同じ価値観の中で暮らしていくと「おじさん化」していくというか皆がつまんない、ルールを疑わない盲目的な人になっていく。そうじゃなくてちょっとでも外部の違う空気に触れてみるのは誰にとっても大事だと思うんですね。だからG1っていうエリートとか優秀な人が集まる場であってもここで得た知見を社会に還元するとか社会の違う階層の人に触れるってことがもっと広まっていけばいいなあっていう風に思ってます。

Q 「努力」について思うこと

やっぱり自分が成功してきた人っていうのは「努力すれば誰でも成功できる」とか「頑張りさえすれば誰もが報われる」と思いがちだと思うんですね。確かにそれは成功した人にとっては当てはまるんだけど、でも実際、成功者の影にも数えきれないくらい失敗した人がいる訳です。しかもその失敗っていうのが必ずしも自己責任とは限らない、自分がどんな階層に生まれるかとかどんな地域に生まれるかとかどんな国に生まれるかによってどうしても将来が規定されてしまう。例えば特に「努力する」っていう誰でもできることのように思われていることでさえ実は階層や才能によって差がある。階層が上の人に生まれたら自然に努力ができるし、逆にそうでない人は努力さえも中々できない。だから結局その階層差とか生まれた環境によるハンデを無くしてからでないと「頑張れ」っていうメッセージは届かないと思うんですね。日本って最近は「起業家精神を持ちましょう」とか「起業家をもっと増やしましょう」とかすごい言われるんですけど、でも実際たしかにその呼び掛けは大事なんだけどそのためには本当はもっと社会制度を整えなくてはいけない。労働環境を自由にするとかセーフティーネットを整備するとか1回失敗してもまた会社を興しやすくするとか。そういうセーフティーネットの整備なしにただ「頑張れ」っていう精神論って中々、意味がないっていう風に思うんですね。だからその「頑張れ」っていう掛け声だけでなくて「頑張れ」って言うんだったらその環境までもセットで整備されるような社会であればいいなあってことは思います。

Q デモなどがほとんどない日本社会を変えるのは何か

日本は確かに昔に比べてデモがすごい減っていたりとかフランスとかに比べてデモが少ないと言われますけども裏を返せば日本社会がまだそこまで悪くない状態であるってことの裏返しだと思うんですね。だからそのデモが起こらないとか社会運動が活発化しないってことは別にそこまで批判されることではない。で同時に何が起こっているかっていうと、そういうデモとかではなく、G1に参加されている駒崎弘樹さんみたいに社会起業家って人がすごい増えてます。火炎瓶を投げつけて国会を壊すんだっていう反乱をするんじゃなくてちゃんと既存の仕組み、既存の政治家、既存の行政と手を結び合ってそこの中で社会を建設的に変えようとする動きがこの10年ですごい広まっています。だからデモという形での民主主義は日本には無いけれど違う形での民主主義、ちゃんと既存の仕組みと上手く手を取り合って社会を変えていこうっていう動きが最近、すごい広がっています。そのことは日本の未来を考えるに当たってすごいポジティブな材料であると思うんですね。例えば、1億人すべてを救うようなヒーローは日本には出てこないとしても1000人とか1万人を確実に幸せに出来る人がこれから増えていけばそういう人が10人、100人、1000人って増えていけば結果的に1億人が幸せになる国になると思うんですね。そういう意味で日本に希望はまだまだあるんじゃないかなという風に考えます。