あきと

『むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをおもしろく,おもしろいことをまじめに,まじめなことをゆかいに,ゆかいなことをいっそうゆかいに』

宮台真司「他人を幸せにすれば幸せになれる」(2017年4月14日)

「子供を育てる時に認知能力だけでなく非認知能力を育てることが大事だ」という話が2016年くらいにマスメディアに出たんですよ。アメリカのシカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授が研究したところによると例えば、同じ幼稚園の入学資格がある中で抽選で選ぶんです。そこに入って非認知能力を高めるための訓練をさせる。すると面白いことに追跡調査の結果、生涯賃金も高くなるし社会的地位も高くなることが分かった。認知能力は知能テストの時に僕たちが調べられているもの。非認知能力は言語的な認識とは関係なく我慢強さ、直感力、こだわらないで次から次へと思いつく力とか色々ある。しかし、これも新しい受験の要件にカウントされて入試なんかに出てしまう。AO入試なんかもそうだよね。最初は創意工夫があったんだけど大体、ルーティン化してきて小論文なんかもそうですけど事前に準備できるものになっちゃうんだよね。そういうのはくだらない。

学問の世界の話をすると、初期のギリシャの時代、「人間は動機づけが大事だ」

真実を知っていても真実に向けて動機づけられない。正義を知っていても正義に向けて動機づけられない。そういうのっていっぱいあるじゃん。「トランプ的なるもの」もそうだよね。享楽を追求する余り正義を知っていてもどうでもいいじゃんっていうことになる。それは昔から言われていることなんです。だから大事なのは「真理より内なる光だ。」これはプラグマティスト、ラルフ・ウォルドー・エマーソンさんの言葉なんですね。社会学の伝統的な言葉では「知識よりも動機づけ」って言ったりします。哲学ではイマヌエル・カントの「知情意」という区別があるので「理性よりも感情と意志が大事だ」と言ったりします。僕らが専門的な論文を書く時は「目的手段的な合理性よりも価値のある目的を樹立する力」つまり、理に適っているかよりも理に適っていなくても何かを望む力と言います。実はこれがあるかないかで人生を決定的に左右するという考え方がもう2000年以上あります。